かつて所属していた会社のある研究所でのことである。
国際学会のコンファレンスなどに参加する場合、出張期間は2週間というのが、暗黙のうちに了解されていた。コンファレンスそのものはせいぜい2ないし3日、長くても1週間である。残りの期間は、いろいろな機関、企業などを訪問することが求められていたのである。もちろん、出張者当人の業務と関係のあるところである必要があるので訪問先は、いきおい、同業他社の同じような組織が多かった。
出張者は、自分で訪問先を決め、アポイントを取り、そして所長の承認を得る必要がある。
さて、承認を得るために所長へ提出する書類には、訪問先に何を期待しているのか、とともに、当人が、訪問先にどのような「貢献」をするのかを記載しなければならなかった。
企業訪問などをする場合には、相手側から企業紹介のパンフレットを貰って、通り一遍の説明をして貰うだけというのが普通であろう。しかし、我々の場合は、それだけでは却下される。とにかく、先方からテイクするものよりも、向うへギブするもの(通常は、なんらかのプレゼンテーションかデモなど)の方が大きいと認められなければならなかった。
当時、他の研究所ではそのような規則はなかったようななので、会社としての方針ではなかったのだろう。当時の所長か、それ以前の所長が決めたことのようである。
考えてみれば、ちょこっとどこかへ訪問したとして、相手とちょっと議論したとして、たいした情報が得られる訳は無い。むしろこちらの手の内をさらけ出したほうが(もちろん程度問題だが)、結果的に、大きなリターンを期待できるはずだ、というのがその真意であったことだろう。「ギブ アンド テイク」というよりは、「損して得とれ」か。
今にして思えば、「オープン」のさきがけだったのかな。
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